[この記事は ソフトウェアエンジニアの Steven Robertson(最近視ているのは "St. Lucia - Before The Dive." )による YouTube Engineer and Developers Blog の記事 "VP9: Faster, better, buffer-free YouTube videos" を元に、山口が翻訳・加筆したものです。詳しくは元記事をご覧ください。]

ますます多くの人が、さらに高画質な動画を、より多くの画面で視聴するようになっているため、使用する帯域幅を増やさずに高解像度を提供できる動画フォーマットが必要になっています。そのため、私たちは YouTube 動画を VP9 でエンコードするようになりました。VP9 はオープンソースのコーデックで、他の一般的なコーデックが使用する帯域幅の半分で、ハイビジョンに加えて 4K (2160p)画質も再生できます。

VP9 は現在広く使われている中で最も効率のよい映像圧縮コーデックです。昨年 1 年間だけでも、YouTube ユーザーが再生した VP9 動画は 250 億時間を超えており、そのうち数十億時間分の動画は、VP9 による帯域幅効率の向上がなければ HD 画質で再生できなかったでしょう。VP9 の再生に対応する端末も増えているため、この技術を簡単に紹介したいと思います。

VP9 の仕組み

動画の情報量は膨大です。カメラセンサーが撮影に使うフォーマットと同じフォーマットで動画を保存するとしたら、そのファイルはとてつもない大きさになります。4K RAW 動画は最大 18,000 Mbps になるでしょう。現在の動画圧縮技術では、撮影されたシーンに含まれる特徴をコード化し、その特徴の動きと変化を追跡することによって、カメラセンサーではなく人間が見るように動画を捉えます。この圧縮はカメラセンサーによる録画に比べて数百倍効率がよく、おかげでビデオストリーミングが可能になりました。

VP9 はそれまでのコーデックと基本原理は同じですが、動画再生の品質をバイト単位で高めるために、WebM チームがさまざまな改良を施して完成させました。たとえば、VP9 のエンコーダーではよりくっきりした画像の特徴が優先して処理され、VP9 コーデックでどのような画像でも鮮明でブロックノイズなく、連続再生できるように非対称変換が用いられています。

Janelle Monaé を通信速度 600Kbps で VP9 と従来の H.264 変換で視聴した場合の質の違いを次の画像で比べてみてください。


高品質な動画視聴を実現

この新しいフォーマットは、すぐに視聴できる高品質でバッファ不要の動画という目標に、すべての人を一段階近づけます。つまり、従来は YouTube でバッファなく最大 480p までの動画しか見ることができなかったインターネット接続環境でも、VP9 のおかげで滑らかな 720p の動画が見られるようになりました。

帯域幅に制限があったり、データ使用量による従量課金プランを使ったりしている人にとっても VP9 はメリットがあります。ビットレートを約半分に削減することで、再バッファしたりかける費用を増やしたりすることなく、360p の画質を視聴できるユーザーの数が劇的に増加します。

4K 動画の世界へ

(本稿の著者を含め)常によりよい画質を求める人にとって、急成長しつつある 4K 動画への世界を開く鍵が VP9 です。実際、VP9 は動画サイズが大きくなると、これまでのコーデックよりもさらに効率がよくなるため、すでに多くの YouTube 視聴者が 4K コンテンツを途切れずにストリーミングしており、その数はますます増えています。YouTube にアップロードされた 4K 動画は昨年 1 年間で 3 倍になり、VP9 のおかげで将来を見据えたストリーミングの改善を計画できるようになっています。検索フィルタを使うと 4K 動画を探すことができます。また、このおすすめプレイリストもご確認ください。

VP9 を利用できる端末

Google パートナーの各種端末メーカーのおかげで、現在では Chrome ブラウザ、Android 端末(サムスン Galaxy S6 など)、テレビやゲーム機(ソニー、LG、シャープ)などで VP9 のデコーディングがサポートされています。2015 年以降、業界全体で 20 を超えるパートナー各社が VP9 に対応する製品を発売する予定です。

自身の VP9 コンテンツを制作する詳細については、FFMpeg encoding guideAdobe Adobe Premier WebM プラグイン をご確認ください。

Posted by Yoshifumi Yamaguchi - Developer Relations Team