Google の IPv6 への取り組み
2011年6月6日月曜日
[Google が参加する次世代インターネットプロトコルの 24 時間のトライアル World IPv6 Day が 2 日後に迫りました。1977 年に ARPA インターネットリサーチプロジェクトのプログラムマネージャーだった Vint Cerf は、現在は Google の IPv6 への取り組みの原動力の 1 人。彼がパケット網インターコネクションの実験で、32 ビットのアドレス形式を選んで以来、既に 30 年間以上、32 ビットのアドレスが使われてきました。しかしインターネットの急激な拡大に伴い、IPv4 のアドレスは枯渇し始めています。World IPv6 Day では、他の大手ネット企業と共に IPv6 に対応する実験を行うことで、産業界の準備が進み、課題を明らかにすると共に一つ一つ解決していけるよう支援したいと思います。この記事では、Google シニアエンジニアリングマネージャの及川卓也が現在までの Google の IPv6 の取り組みについて紹介します。 -山崎]
Google Japan Blog にて公開した記事「IPv6 への移行に向けた実験を実施します」でお知らせした通り、Google は来る 6 月 8 日に World IPv6 Day に参加し、将来の IPv6 への準備をさらに進めることを予定しています。
ここでは、現在までの Google の IPv6 の取り組みについて紹介します。
Google 社内では以前から IPv6 への取り組みが行われていましたが、対外的なサービスでの IPv6 対応が開始されたのは 2008 年になります。まずは、google.com でのウェブ検索が IPv6 対応されました。別のドメインとして ipv6.google.com を用意し、IPv6 対応の OS やブラウザを持つユーザーが IPv6 で接続し検索した場合に、IPv6 で検索結果を返すものとなっています。ついで、日本でも同じサービスを開始しています。ipv6.google.co.jp で今でも利用できます。
その後、Google ではすべての Google のサービスの IPv6 化に向けて、Google over IPv6 を開始しました。これは、ipv6.google.com や ipv6.google.co.jp のように別ドメインで明示的にユーザーの方に IPv6 を指示していただくのではなく、IPv4 で使っているのと同じように Google サービスを使っていただくだけで、IPv6 で接続されるものです。例えば、www.google.com にアクセスするだけで、IPv6 を使って接続し、検索結果も IPv6 で返ってきます。もはや別の URL を入力する必要がありません。
この Google over IPv6 は、ただし、限定された ISP にのみ提供されています。
IPv6 で接続する場合、ホスト名をアドレスに変換するために、DNS リゾルバーが A もしくは AAAA レコードを DNS サーバーに問いかけます。Google は一般の DNS リゾルバーに対しては IPv4 用のアドレスである A レコードしか返しません。
しかし、あらかじめ IPv6 の接続が確認できているネットワークの DNS リゾルバーに対しては AAAA レコードを返すようにしました。これにより、この「あらかじめ IPv6 の接続が確認できている」、すなわち Google over IPv6 に参加しているユーザーは同じ URL で Google 側が IPv6 対応できているサービスについては IPv6 で接続できるようになったのです。
この Google over IPv6 上で利用できる Google サービスは当初は限定的でしたが、現在ではほぼすべての Google サービスで利用できるようになり、2010 年 2 月には YouTube も利用できるようになっています。
この Google over IPv6 の利用には、ISP の申し込みが必要です。条件としては、1) 十分に低いレイテンシーであること 2) プロダクション品質の IPv6 のサポートと信頼性があること 3) IPv6 用に専用の DNS サーバーを用意していること 4) ユーザーに対し、Google over IPv6 をオプトインで利用できるようにし、問題が生じた場合にオプトアウトできる仕組みを備えていること があります。
このように、ISP を限定し、IPv6 で利用できるユーザーを制限したのは、まだ IPv6 の接続が必ずしも十分に安定したものになっていないためです。IPv6 アドレスを持っていても接続できない、もしくは接続できても IPv4 に比べて不安定である、速度が遅いなど、いろいろな問題が想定されます。そのため、そのような問題が生じないことをあらかじめ確認できた環境のユーザーにのみ提供するという手段をとっています。
Google over IPv6 についての詳しい解説は Google over IPv6 をご覧ください。
World IPv6 Day においては、この限定されたユーザーにのみ提供されていた Google の IPv6 接続環境をすべてのユーザーに提供します。
最後に Google が独自に調査した現在の IPv6 の利用状況を紹介しましょう。Google は www.google.com にアクセスしたユーザーの IPv6 環境を分析しています。分析の方法については、公開されている論文をご覧ください。以下がそのグラフになりますが、まだ少ないものの、IPv6 接続できるユーザーが増えていること、その中でもネイティブ環境での接続が増えつつあることがわかります。Teredo や 6to4 などのトンネル環境でのユーザーは減少傾向にあります。
冒頭で説明した ipv6.google.com や ipv6.google.co.jp ですが、これらにアクセスしても接続ができないという人も多いと思います。その多くは IPv4 でアクセスされているためです。もしくは IPv6 環境があるものの、なんらかの理由で接続に失敗しているためです。この後者のような問題を把握するのが 6 月 8 日に行われる World IPv6 Day です。一部、接続などで問題が生じるかもしれませんが、将来に向けての大事な実験であることをご理解いただければ幸いです。皆様とともに持続可能なインターネット環境を切り開くために、Google はさまざまな試みを続けていく予定です。