Google Summer of Code のおしらせ
2011年4月5日火曜日
オープンソースソフトのコードを書きたいけれどきっかけがない、そんな学生の皆さまに朗報です。
Google Summer of Code (以下 GSoC)は学生の皆さんにオープンソース開発への参加を奨励するために企画された奨学プログラムです。GSoC はこれまで 4,500 人の学生の皆さんと 300 を超えるオープンソースプロジェクトを引き合わせ、何百万行ものコードを生み出してきました。世界中の応募者から選抜された学生には 3 か月間のコーディングプロジェクトに集中することを可能にする 5,000 ドルの給付金が支払われます。プログラムはすべてオンラインで行われ、これまでに 100 以上の国から学生や学生の面倒をみるメンターの方々が参加しています。さらに、Google Open Source Blog で紹介されているように、2011 年は 175 のプロジェクトに加え採択の枠を 150 枠増やしました。
今回、GSoC 経験者で Google 東京 R&D センターで働いているソフトウェアエンジニア 4 人に話を聞きました。
Q. 最初に、Google での現在の仕事について、簡単に紹介をお願いします。
鵜飼 文敏
2006 年 - 2009 年 FSIJ でメンター組織として GSoC 参加
2006 年 Google 入社、現在 Special Project チームで Chrome などのビルド環境の改善にとりくむ
向井 淳
2006 年 GSoC, haskell.org 参加
2007 年 Google 入社、現在 Google 日本語入力チームで Google Transliteration サービスなどを開発している
花岡 俊行
2006 年 GSoC, FSIJ 参加プロジェクトはオープンソース日本語変換ソフトウェア Anthy への統計的言語モデル導入のための下地づくり
2009 年 Google 入社、現在 Google 日本語入力チームで変換クオリティの改善、自動テストツールの開発にとりくむ
服部 慶士
2008 年 GSoC, WebKit 参加プロジェクトは Web Inspector の機能強化、Firebug API の実装
2011 年 Google 入社、現在入社 2 日目。Chrome チームで HTML5 Forms に取り組む予定
Q. 学生時代にオープンソースに関わるようになったきっかけは何でしたか?
花岡: 当時サークルの先輩で今は Google のエンジニアの T さんに誘われました。
向井: 僕は Linux を使っていて、プロダクトの文句をブログで書いたら作者から連絡があったんです。オープンソース系のものはコメント機能やメーリングリストがあることが多いので、意見交換から関わりをもつことができますね。
服部: GSoC がオープンソースのデビューでした。
Q. Google Summer of Code に応募してみようと思った理由は?
向井: 好きな開発ができて、さらにお金がもらえるからです。(笑)
花岡: 興味があるプロジェクトがあったのと、メンターの指導のもとで実際の開発に関われることに惹かれました。
服部: 正直、T シャツが欲しかったから。だめでしょうか。。(良いと思います)
Q. プロジェクトは具体的にどのように進めるのでしょうか。メンターとはどのような関係ですか?
鵜飼: 進め方は携わるプロジェクトの内容と、その組織との物理的な距離や時差によって個人差はありますが、基本の作業はオンラインで行えるので、ネットにさえアクセスできればどこからでも参加可能です。
花岡: そうですね。僕は当時京都にいたんですが、メンターがいる組織が東京にあって、打ち合わせ、中間発表と最終発表を東京で行いました。(※) メンターも日本人でしたし、日常のやりとりや発表はすべて日本語でした。
向井: 僕は反対に一度もメンターと会うことはありませんでした。英語のメールやチャットでやりとりをして、また、進捗についてブログを書くようにしていました。ライブラリーを作る仕事だったので、メンター以外の人からもいろんなメールが飛んできたのを覚えています。
服部: 院試などと重なって大変な時期もありましたが、プロジェクトを終わらせてから院試の勉強をしました。ニューヨークにいるメンターとは、IRC上で連絡を取りながら進めていました。あの時差は学生だったからこそ克服できたのかもしれません。
※開発や発表に掛かる移動などは GSoC の規定外で行われます。詳しくは FAQ をご覧ください。
Q. 振り返って、どういう点が有益でしたか?
花岡: まず、知り合いが増えました。先日、自然言語処理の学会へ行った際に GSoC がきっかけで出会った人たちに再会しました。Google 日本語入力の開発に携わることになったのも、GSoC があったからだと思います。
向井: 技術力が身につくのはもちろんですが、例えば、英語のメーリングリスト上で行われるディスカッションの進め方など、大学の研究所ではあまり得られない知識や経験が身につきます。
服部: 僕は専攻がハードウェアだったんですが、GSoC でソフトウェアの開発に直接携われて、そこからいろいろあって Google に入社できたんだと思います。
全員: おおー。
Q. 応募にあたっての準備や心構えなど、学生にアドバイスがあればぜひ教えてください。
鵜飼: まず、やってみたいプロジェクトを選ぶこと、わからないことがあればメンターにどんどん聞くことです。むしろ、いままで開発をやったことがないけれど、やってみたい人を後押しするための仕組みなので、背伸びをするくらいが良いんです。
花岡: そう。「ちょっとわからないけど、やってみたい」がちょうど良いと思います。
向井: 提案書作成の際に自己アピールを心がけることも重要だと思います。(※) なぜ興味を持ったのか、メンターも学生さんに興味がありますし。
※GSoC Student Guide には提案書のサンプルもあるのでぜひご活用ください。
Q. 採択される秘訣、その他裏話があれば教えてください。
鵜飼: 多くの場合、応募をする前にメンターの人たちにコンタクトを取ることが可能なので、質問をしたり、事前に情報収集をすることがおすすめです。
向井: その組織のメーリングリスト上のディスカッションを見て雰囲気をつかむこともできますね。
服部: 僕は提案書の作成や実際の開発より、振込先登録などの手続きに手こずりましたが。
向井、花岡: 同じく。
Q. ありがとうございました。最後に、給付金は何に使いましたか?
花岡: 普通に貯金しました。
向井: 僕も貯金した気がします。
服部: 開発をさらに快適に進められるよう(?)人間工学に基づいたデスクチェアーの購入にあてました。(笑)
参考になりましたでしょうか。
Google は 2011 年 3 月 28 日から 4 月 8 日(金)19:00 UTC まで学生の皆さんからの応募を受付けています。申込み方法や多くの学生に最も重要な T シャツに関する情報など、参加のための詳しい条件は次のサイト(英語)をご覧ください。
http://socghop.appspot.com
日本語で GSoC 関係者や経験者に質問したい方はぜひ GSoC メーリングリスト (日本語) もご利用ください。
皆さまからのご応募お待ちしております!
参考
Google Japan 公式ブログ上で過去に掲載された GSoC 関連記事
2010年 http://googlejapan.blogspot.com/2010/04/google-summer-of-code.html
2009年 http://googlejapan.blogspot.com/2009/03/google-summer-of-code-2009.html
2008年 http://googlejapan.blogspot.com/2008/03/google-summer-of-code-2008_9888.html
Google エンジニア インタビューシリーズ 第 1 弾: 鵜飼文敏
2007年 http://googlejapan.blogspot.com/2007/06/google-1.html